当院の庭について|沖野上木村歯科医院|福山市の歯医者・歯科・小児歯科・歯科口腔外科

当院の庭について
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なっちゃんのパパは歯医者さん

1才になったなっちゃんのパパは、沖野上町で歯医者さんのお仕事をしようと考えました。歯を治療する患者さんはとても緊張します。安らぎと癒しを感じるには、なるべく優しい空間ですごしてもらいたいと思いました。
少なくなった自然と小さな生き物が、また見れたらとても癒されるかもしれません。

沖野上町のお話

今から400年ほど前、かつてここ沖野上あたりは海でした。
芦田川が流れ込む湾には干潟や小島が浮かび、多くの生き物たちにとってもきっと楽園だったことでしょう。

福山藩初代藩主、水野勝成は豊かな国づくりのため、干拓により福山城下町と農地を広げたのです。
この事業は江戸期中も続けられ、幕末には湾口に浮かぶ箕島近く、茶山までの広大な農地となりました。

明治以降も干拓地は広がり続け、田畑をはじめ、鉄鋼業をはじめとした工業地域、市街地の拡大による住宅地として福山の街の一部となりました。福山駅から沖野上町方面を見てみますと、かつて一面の田畑が広がっていた干拓地も今では市街地となり、緑も少なくなりました。

森と小さな生き物たち

自然の緑は人の気持ちも癒してくれます。木々があると蝶や小鳥などの小さな生き物たちも集まります。
なっちゃんのパパはその空間をつくることにしました。

ふるさとの森づくり

“地元の樹”だけで森をつくります。沖野上は、現在宅地化が進んでいます。
近くの里山(箕島)や田んぼにみられる植生を教科書として、地域の在来樹種を選び、ふるさとの森づくりを目指します。
福山藩初代藩主、水野勝成は豊かな国づくりのため、干拓により福山城下町と農地を広げたのです。
この事業は江戸期中も続けられ、幕末には湾口に浮かぶ箕島近く、茶山までの広大な農地となりました。

“生き物たち”にも来てもらいます。市街地にある街路樹や庭。個々は小さくとも、生き物たちには憩いの場所となります。 この小さな森も、安心して立ち寄りやすい環境となるでしょう。

鳥の駅、”チョウの径”。市街地の並木、植栽や庭。
一つ一つは小さくても、飛び石になってつながっていけば、生き物のネットワークになります。

建てものを木でつくるお話

歯が痛くなった患者さんを治療する建てものです。骨組みもぜんぶ木でつくることにしました。
木の空間は、どこか優しい感じがします。さわったり、歩いたりすると、わかります。

木造の建てものと森のつながり

木の建物が増えると、森で生まれた樹木が大切に育てられます。
そうすると、森とそこで働く人たちが生き生きとしてきます。
森から流れでる川や、その先の海、暮らす魚たちも、今よりも、もっと元気になるのです。※

木を守り、人を守る

木は、長い間水に濡れると腐り、火が点くと燃えます。
金属板は水にも火にも強く、組み合わせることで丈夫な建物になります。
近隣の家事に備えて、建物がお隣と面する壁は、燃えない金属板に、 また雨や風を庇や軒で守ることが出来ないむき出しの木壁も、金属は守ってくれます。
木の建物を金属の布で大切に包んでいるかのような佇まいをイメージしています。
そして、この建物が大切に包んでいるのが、家族や患者さんの「命」です。

呼吸する木壁

建物も季節によって汗をかくことがあります。木は、乾燥すると縮み、湿気ると伸びます。
この自然の木が持つ特徴をさらに活かして、建物のかく汗(湿気)をコントロールする知恵が下見板張にはあります。
雨の日など湿度が高くなると密着し、晴れて乾燥すると隙間が空くことで、壁内の湿気を放出します。
柱などが汗をかいたようになることは無く、カビや腐朽を防ぐことができるのです。
魚のエラのようにパクパク呼吸する壁を、下見板張が実現しています。

都市の質感

集合住宅や高架橋、私たちの街(都市)には今、コンクリートと無機的な建材で造られてきた近代都市の風景が広がっています。この都市の歴史を尊重しながら、景観を柔らかなものに整える時代を迎えています。近年、現代的な材料として木材を光学的(木質構造設計、防災、腐朽など)に扱うことができるようになってきました。

木の質感、ガラスの透明性、樹木の緑を組み合わせた都市のテクスチュアが、今後の街の風景になるのではないでしょうか。

林をつつむ、林を見せる

建物には、使う場所ごとに役割があります。そのために、材料は、補いあって、建物を成り立たせています。たとえば、強いけれど粗っぽい合板は、地震や風に負けない建物にするために柱と柱をつなぎ、構造的に頑張っています。ちょっと弱いけれど細やかで美しい木目の板は、患者さんが間近で触れる診察室で、荒々しい構造が目に入り、診察を妨げないように、優しい雰囲気を作ります。

そっと静かに各場所で各材料が役割を担っている・・・
そんな使う人や場所に配慮した建ち方を目指しています。

ネジルと強くなる

テーブルがユラユラと揺れると、落ち着いて食事できません。太い木脚にしたり、つっかい棒を付けると使いにくく、恰好が悪くなります。
そこで、鉄の帯板を少しネジってテーブルの脚にしてみます。そうすると鉄脚そのものが強くなります。4本の脚の向き方を考えて配置すると横方向の弱さを補い合います。これでスリムで強度もしっかりとしたテーブルになります。

素材の記憶

塀ごしに香る「キンモクセイ」に足をとめ、その匂いに遠く古い記憶が呼び起されるような経験は、誰にでもあると思います。強く印象に残るのは眼で見た形だけでなく、臭いや肌触りなどの五感も様々な記憶を留めています。
素材の質感を大切にデザインをすることで、私たちの暮らしを包む建物に、この場所や今の時代を封じ込めることが出来ればと考えています。
なっちゃんが故郷を離れても、板張の建物を見たら、沖野上を思い出しますように・・・

歯医者さんのお仕事
~なっちゃんのパパのお仕事です

歯の病気はとても痛いです。大好物のお菓子も美味しくなくなっちゃいます。きれいな歯になればいっぱい食べられます。笑うとキラキラ色い歯が光ります。 でも・・・
治すのは痛いので、大人でも嫌です。

緑が見えたり、小鳥がさえずったり、木の温かみが感じられると不思議と痛みが小さくなる気がします。
治療の時間も、居心地が良いと怖い気持ちも少なくなります。

患者さんがいつも笑顔でいられるよう、歯を治療することが楽しくなるように・・・。
なっちゃんのパパの気持ちです。

健康な歯を保つため、歯は重要な身体の一部です。しっかりとした食事を取る、また顔の表情をいつでも明るく保つ、そこには、長くしっかりと口の中に健康な歯のある環境があってこそです。 歯科を「歯が悪くなったら行くところ」から「悪くなるように行くところ」という、予防型の歯科医院という本来の姿を、目指しています。また、患者さんが個々に合った治療を行うとともに、治療の内容を深く理解することが、治療にもつながるという思想のもと、丁寧な「説明」を治療の一部としています。
生活の質の更なる向上によって、若々しく、美しく、楽しい人生のサポートを患者さんと共に考え、実践したい。

―――――――――――――木村歯科の求める理想です。

なっちゃんのパパは歯医者さん

こうして、なっちゃんのパパは森の歯医者さんになりました。

パパは楽しみです。森の緑も、小さな蝶や小鳥たちも、木で作った建てものも、なっちゃんと一緒の時間をたどっていきます。

患者さんも、大きくなったらなっちゃんも、安らぎと癒しを感じる優しい空間と緑があふれる街ですごしてもらいたい・・・の想いがかないますように。

※撮影・テキスト:加藤詞史
※作図デザイン:近藤和磨
記事作成日:2013年6月

(株)加藤建設設計事務所
03-5285-5833
URL:www.kotofumi.com
mail:koto@kotofumi.com

庭のデザイン:安斉健雄/インターリスク総研